JICA海外支援事業「ウズベキスタン フェルガナ州における政策支援」
JICA Overseas Support Project
Day 1
近年、ウズベキスタンでは急激な人口増加により、とくに若年層において貧困や格差が問題となっています。
既存産業の成長や新たな産業の新興による雇用創出支援を目的に、東京大学の開発経済学を専門とする樋渡雅人教授が主体となって複数年に渡り実施されているJICAの当プロジェクトに、一部参加させていただくこととなりました。
ウズベキスタン東部のフェルガナ地区は、伝統的に絹織物や刺繍、陶芸や木工などが家庭の仕事して受け継がれ、その品質の高さから近年では海外へ輸出される産業となってきています。
手工芸を得意とする同地区において、新規産業として皮革製品の製造も新たに始まっているところで、KEETSとして何かお手伝いできることがあればという想いをもとに、視察も兼ねて5日間に渡り現地へ伺いました。



Day2
2日目はまずフェルガナ地区の伝統刺繍「スザニ」の工房を見学しました。
ウズベキスタンの自然をモチーフとした鮮やかな柄が特徴の天然染料のみで染められたシルク糸の刺繍布は一針一針手作業で仕上げられます。
完成までに数日〜数ヶ月、絨毯に至っては数年かけて織られるそうです。



次に訪れたのは、家業として代々受け継がれる養蚕工房で、「アトラス」と呼ばれる伝統的な絹織物を製造しています。
こちらでは繭から絹糸、織から染めまで一気通貫で行っています。
やはり化学染料は使用せず、多様な植物のみの自然染料で鮮やかな絹織物を作っています。
自然素材にこだわり時間をかけたものづくりの難しさは想像に難くありません。
ここで感じた我慢強さ、勤勉さ、手先の緻密さ、自然の彩りへのリスペクトなどは、もともと私たち日本人も得意としてた分野のはず、と改めて気付かされました。



Day3
3日目は、現地の皮革製品製造に携わる方々に向けてセミナーを行いました。
北海道のことやKEETSの紹介から私たちのブランド作り、プロダクトデザイン、使用している道具や資材、型紙作り、販促やマーケティングに至るまで、これまで私たちが経験してきたことをお話しさせていただきました。
朝から夕方まで終始取り止めのない話となりましたが、皆様には最後まで熱心に聞いていただき、大変嬉しく思いました。
最後は皆様のオリジナリティ溢れるプロダクトを拝見し、良い部分や改善点など意見交換させていただきました。
皆様の真剣な眼差し、バッグ作りに対する情熱とひたむきさををひしひしと感じ、私たちも大変刺激となりました。



Day4
4日目、ウズベキスタンの伝統工芸の一つである陶器工房へ伺いました。
スザニと同じように、自然をからインスパイアされたカラフルな柄が特徴で、一見色数は多いように見えますが、大変バランスが取れていて日本の居室にもう調和するように思えます。
細部が緻密で忍耐の結晶と言えます。
観光の方はあまり訪れないという地元のバザールもご案内いただきました。
大きな円盤状のパン「ナン」が至る所で売られています。
レストランでは常にテーブルに備えられ、これがまた大変美味しいのです。
このナンにも色々と異なるウズベク柄模様が描かれ、ウズベキスタンならではの遊び心が効いています。



最後に地元のタンナーを見学させていただきました。
様々な用途に向けて幅広く鞣され、加工されています。
タンニンやクロームは効率的に使い分けされています。
フェルガナの皮革生産の基礎は意外にもしっかりと確立されており、ウズベキスタンの人々の忍耐強い精神性、そして緻密な伝統工芸と独自に融合することで唯一無二の皮革ブランドの成長と発展が見込まれるのではないかと感じました。

Day5
最終日はフェルガナ地方から飛行機で首都タシュケントへ戻り、新しく建設されたショッピングモールや商業施設を視察いたしました。
タシュケント中心地は再開発が急速に進み、外資系ホテルやショッピングモール、不動産価値の高いマンション、大きな公園などが美しく整備され、現在も建設ラッシュが続いています。
日本のメディアがまだ見ぬウズベキスタン中心地のスポットは、計り知れないパワーが渦巻いておりました。
今後、世界の観光地として、より一層の発展が見込まれています。



シルクロードの要衝として発展したウズベキスタン。
西洋と東洋が混じり合い、文化も精神も多様で、懐の深い国。
人々の心も純粋で優しくて、古来なんでも受け入れて独自の文化を築き上げてきた日本の姿と共通するところをいくつか垣間見た気がします。
今回のJICA海外支援プロジェクトにおいて、私達の経験や価値観がセミナーを通じてフェルガナの皆様に伝わり、今後の相互発展に向けての一粒の糧ともなれば甚だ幸いです。
今後も交流を続けたいと思います。